書いといてなんですが、ビックリした(笑)
私の文で良いんですか?……調子こいて載せちゃいますよ?
読みたいと言って下さった方がおりましたので……
悪ノシリーズ、【 2 】です。
例によって『つづきはこちら』からどうぞです。
【 2 】
黄の国はとても穏やかな気候で、隣国の緑の国、海を隔てた青の国とも長らく
友好関係にあり、国は穏やかだった。
若き王は優しく朗らかで英知に優れた、歴代の名君の中でも飛びぬけて素晴らしい国王
だと民に賞賛され、そんな王を陰ながら支えている王妃も常に優しい微笑みを絶やさず、
民にも慈悲深い女性だった。
民は王と王妃の下、誰もが幸せに暮らしていた。
唯一つ懸念があるとすれば、なかなか世継ぎが生まれない事だった。
若い国王夫婦も、民も、国中の誰もが世継ぎの誕生を心待ちにしている。
しかし、数年前に王妃は大病を患い、危うく命を落としかけた。その時の治療に用いた
薬の副作用で、子を身籠りにくい身体になってしまっていたのだった。
いつも優しい笑顔を浮かべている王妃が、時折見せる悲しげな瞳に国王も、民も祈らずにはいられなかった。
どうか、子供が授かりますように……と。
それでも王妃に子供が授かる事もなく、数年の月日が流れた。
ある日の昼下り、王国はいつもの様にたくさんの旅人を迎え入れ、
市場は大いに賑わっていた。
そこかしこから大きな客引きの声が聞こえ、国の特産品でもある黄色の果物が甘い芳香を放ち鼻をくすぐる。
陽射しも優しく降り注ぎ、誰もが今日も良い一日になるだろうと思っていた。
そんな穏やかな昼下りをかき消すかの様に、ドタドタと騒々しい音を立てながら
一人の男が、市場へと飛び込んできた。
「た、大変だ!お、王妃、王妃様が!!」
顔を真っ青にして男は、息も絶え絶えに続けた。
「王妃様が、お倒れになった!」
王妃が倒れた、その言葉に誰もが仕事を続ける事など出来ずに、中央広場に集まり不安げに王城を見上げひそひそと話し込んでいた。
誰もが数年前の王妃を思い出していたのだ。
青白い顔をして、やせ細ってしまった王妃。
王妃を心配するあまりに憔悴しきっていた王。
辛い筈なのにいつでも、どんな時でも自国の民の為に心を砕いていてくれた2人が、
また苦しむのではないかと思うと皆の心は張り裂けそうだった。
不安げに見詰める中、静かに王城の扉が開かれ十数名の兵士が現われた。
手には黄金のラッパが握られている。
それは王家の者に、何かがあった際に使われるものだった。
やはり、王妃様のご病気は重いのだろうと誰もが思った矢先、それは鳴り響いた。
何年もの間、国中の誰もが待ち望んでいた力強くそれでいて、優しいファンファーレ。
広場に集まっていた誰もが理解できずに隣人の顔を見つめあった。
そして、もう一度兵士を見詰める。
気難しい顔でラッパを吹いていた兵士が、ニコニコと笑っている。
一瞬の静けさに包まれた広場が次の瞬間、割れんばかりの歓声に包まれた。
「王様!万歳!」
「王妃様!万歳!」
皆が皆、諸手を上げて喜んだ。
ファンファーレは、鳴り続ける。王妃の懐妊を国中に知らせる為に。
そして調べは緩やかに大陸全土に伝わる。
緑の国の赤子の耳にも、青の国の幼き王子の耳にも。
そして、赤き流浪の民の少女にも……。
この時はまだ、誰も知らなかった。
その調べが、全ての始まりを告げる運命の開幕ベルであった事を……。