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私と旦那と相方そして愛犬ラケのヲタクな日常です。
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ここ数日はクーラー要らずで快適に過ごしております!
やっぱり、自然の風の方が冷たくて気持ち良いですよね♪
……いや、すごい温くて嫌な時もありますが(笑)

投稿しては失敗続きだった続編も何とか上げられそうなので……
大変お待たせいたしました!!
悪ノシリーズ【3】でございます。
『つづきはこちら』から、お読み下さいませ!

【 3 】


月日は流れ瞬く間に王妃の腹は膨れ上がり、後は出産を待つばかりとなった。
生まれてくる赤子の為に王は政務にますます力を注ぎ、それに答えるように民も仕事に
精をだし王国は活気づく。
国中が幸せの中にいた。
だが、誰よりも喜んでいた筈の王妃の顔は違っていた。
腹が膨れれば膨れるほど、子が育てば育つほどに笑顔が消えていった。王も民も、初産に戸惑っているせいだろうと、深く気にする者は居なかった。
ただ一人、産婆であり王妃の乳母でもあった老婆だけが王妃の不安を感じ取っていた。
王妃の大きな腹を見て誰もが、きっと大丈夫な子が生まれて来るだろうと喜んでいだが、老婆は王家に伝わる忌まわしい伝承を思い出していた。
王妃様の不安もこの伝承によるものだろうと……。
それは代々、王家にのみ口伝で伝えられる言葉だった。

  双子は凶兆
  王家に生れし子が、双子ならば間引くべし
  双子は凶兆
  王家に生れし双子は、民を苦しめ国を滅ぼす
  双子は凶兆
  ゆめゆめ忘れる事無かれ 

この伝承を知っているからこそ、王妃はその大きすぎる腹に不安になっているのだろう。
産婆として数多くの子供を取り上げてきた老婆もまた、その経験から王妃の腹には、
双子が宿っている可能性が高いと思っていた。
けれども、恐ろしい伝承故に王妃も老婆も互いに口にする事が出来なかったのだ。
互いに口に出来ぬまま、いよいよ出産が近づいたある晩、
王妃は乳母を伴い城の屋上へと足を進めた。
重たい腹を抱え片手で手すりにつかまり、もう片方の手は老婆がしっかりと握りしめ、
ゆっくりと一歩一歩、屋上への階段を昇っていった。
何度も途中で休み、長い時間をかけて二人はようやく昇り終わった。
呼吸を整える王妃の手を放し、老婆は屋上へと続く扉を押し開ける。
開かれた扉の先には満天の星を湛えた夜空がとこまでも広がっていた。
しばらく無言で夜空を見上げていた王妃は静かに老婆に話しかけた。

「ねぇ?ばあや……。この子は無事に産まれてくれるかしら?」
「きっと、丈夫なお子が、お生まれになりますよ」

諭すように優しく老婆は答えたが次の王妃の言葉に、黙り込む事しか出来なかった。

「……やっぱり双子、だと思うの」

夜空を見上げたまま王妃は呟く。

「ばあやも知っているでしょう?あの、恐ろしい言い伝えを……」

大きな腹を擦りながら王妃は続ける。

「この子は……この子達は、王に、民に、祝福してもらえるかしら?」
「……姫様。」

夜風が冷たいのか、ブルッと身体を振るわせた王妃にそっとショールを掛け老婆は
その背を優しく撫でた。

「ご心配されますな。この婆が姫様も、御子様もお守り致します」
「ばあや・・・・・・」
「姫様は、幼き頃より泣き虫が治りませんなぁ・・・・・・」

声も出さずにホロホロと涙を零す王妃の背中を、老婆は撫で続ける。
少しでも、王妃の負担を取り除く為に。

「・・・・・・ありがとう」
「泣き虫姫様を笑わせるのが、私の役目でしたからねぇ・・・・・・王に取られるまでは」
「まぁ!そんな風に思っていたの?」
「王には秘密で御座いますよ?」

夜の帳の中で2人はくすくすと笑った。

「さぁ、もう夜風はお体に悪う御座います。お部屋へ戻りましょう」
「そうね・・・・・・ッ!!」

老婆がそっと王妃の手を取り、歩き出そうとしたその矢先に王妃は苦しそうに声を震わせ、
足元をふらつかせた。

「姫様ッ!!」

慌てて老婆が腕を引き寄せ、転倒は免れたものの呼吸は荒く、足元はおぼつかない。
老婆はショールを床に敷き、そこへ王妃をゆっくりと座らせた。
王妃の顔を見れば額に玉の汗が幾つも幾つも噴出している。

「姫様、陣痛が始まったのですよ」
「……ッ、そ、そうみたいね」

苦痛に顔を歪めながら、王妃は老婆の手を握る。

「姫様、兵を呼んで参ります。直に、戻って参りますよ」

ギュッと力をこめて王妃の白くて細い手を握り返し、にっこりと笑った後、
老婆は走り出した。

「衛兵ッ!衛兵!!姫様をお運びして下され!!!」

ひとりで屋上に残された王妃は、陣痛の痛みに耐えながら空を見上げる。
雲ひとつ無い満天の星空に、ひと際明るく光る双子星に祈りを込めた。

「無事にッ、う、生まれます様に・・・・・・ッ!!」

ドタドタと大勢の人が階段を昇ってくる足音が響き、乳母である老婆が自分の名を呼ぶ声が聞こえてきた。
そんなに大きな声をださなくても、ちゃんと聞こえてるわよと小さく呟き、屋上の扉へと目をやると誰よりも先に飛び出してきたのは、最愛の夫だった。
真っ青な顔をして駆け寄ってくる姿が見えた。
そういえば、王も割りと泣き虫なのよ、ばあや……
王に向かって伸ばしかけた手が途中で止まり、王妃の意識はそこで途切れた。

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