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私と旦那と相方そして愛犬ラケのヲタクな日常です。
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こんばんわ~
なんですかね、これ?もう当日?
あと数時間後にはイベントですが、原稿オワッテマセンヨ?
アレ?


はい!大変お待たせ致しました!!
悪ノシリーズ【4】でございます。

『つづきはこちら』からお読み下さいませ。


【 4 】


「父さん!急がないと日が暮れちゃうよ!」
「あ~、もちっとゆっくりしても大丈夫だろ?」
「ダメ!早くしないと黄の国に着くのが遅くなる!」

黄の国へと繋がる渓谷とそこを旅する一組の親子を、燃えるような夕焼けが鮮やかに照らし出していた。
少々くたびれた旅装束に身を包みゴロンと横たわる父親を尻目に、幼い少女はテキパキと休憩中に使っていたであろうブリキのカップや、火の後始末をしている。
ぶつぶつと小言を呟きながら支度を整える娘に、追い立てられる様にして男は立ち上がり、身体についた土埃を払う。

「やれやれ、お前はどんどん死んだ母さんに似てくるな」
「これだけ面倒くさがりな父さんを持てば、仕方ないじゃない?」
「そりゃ、悪かったな」
「母さんの苦労が目に浮かぶわ」
「あぁー、どーも分がわりぃな……さっさと出発するか」

容姿どころか性格まで妻そっくりに育ちつつある娘に、些か複雑な心境になりつつ、
男は身の回りを整えた。

「谷を越えた所に宿があるから今日はそこで宿をとるぞ」
「久々に寝台で寝れる!サクサク歩いてよね!」
「へーへー」
「返事はハイ!」
「ハイ!了解致しました!隊長殿!」
「よろしいッ!」

火の始末を終えた娘がニッコリと笑って走り出す。
旅の荷物が詰められた皮袋を背負い男も歩き出した。

「おい、あんまり走ると転ぶぞ」
「大丈夫!それより宿に着いたら剣の稽古つけてよね!」

男は、なだらかな坂道を走ってゆく娘を目を細めて見詰め、次に空を見上げた。

「……なぁ?見えてるか?あいつは立派に育ってるぜ?」

何処までも青く澄み渡る空に呟く。

「父―さーん!!置いてくよー!」
「今、行くよッ!」

少し離れた場所で、足を止めてこちらに振り返り膨れっ面で叫ぶ娘に、
軽く手をあげて答える。

「少しばかりじゃじゃ馬だけどな」

もう一度空を見上げ、にぃっと笑った後、男は娘に声をかけた。

「置いてくなよー!メイコ!」


宵の帳が降りかかる頃、親子は宿に辿り着いた。
宿は黄の国へ向かう旅人や行商人達でそこそこ賑わっていて、食堂からは灯と賑やかな笑い声がもれていた。

「やっと着いたー。もう、父さんの休憩が長いから予定より遅くなっちゃったじゃない!」
「ちっとばかし、だろ?」
「でも、剣の稽古が……」

不満そうに自分を見上げる娘に苦笑しつつ男は、メイコの頭をグリグリと撫で回した。

「心配すんな、ちゃんと見てやるから。でも、まずは腹ごしらえが先だ」

ぐぅーと、けして小さくない音で腹が空腹を訴えていた。何か口に仕掛けたメイコだったが、それよりも先に父と同じ様に腹が音を立ててしまい顔を真っ赤にして俯いた。

「な?飯が先だ」
「う、うん」

父親に腹の音を聞かれたのが余程恥かしかったのか、モジモジと返事をするメイコの背を押しながら男は食堂へと歩みを進めた。

「今日は、久々にご馳走にありつけるな」
「……あんまり無駄遣いしちゃだめだよ」
「たまにはいーじゃねーか」

賑やかな食堂の片隅に空席を見つけ、2人で座りあれこれと注文をした後、のんびりと料理が出来上がるのを待つ。
親子で些細な会話に笑いあっていると、テーブルに次々と料理が運ばれてきた。
よく焼けた骨付き肉、香ばしい匂いをたてるパン。裏の畑で収穫した熟れたトマトに、揚げたてのチーズ。他にもたくさんの皿が所狭しとテーブル並んでいた。

「父さん、これ……頼みすぎじゃない?」
「ん?まぁ、いいじゃねーか。ほれ、温かいうちに食え!」

あまりの料理の数にメイコが目を白黒させる。それでも食え食えと、進めると嬉しそうに肉に噛り付いた。

「美味しい!」
「そいつは嬉しいねぇ!お嬢ちゃんには、絞りたてオレンジジュースのオマケつきだ!」

メイコの歓声が嬉しかったのか、宿屋の店主が満面の笑顔でジュース片手に現われた。

「お!気前がいいな!メイコ、礼いっとけ」
「うん!おじさん、ありがとう」
「なんの、なんの!うちの飯を旨いって言ってくれたんだ。こっちこそ、ありがとよ」

店主からジュースを受け取り、笑顔で礼を言う娘に男もつられて笑顔になる。
しかし、それじゃ、と言って立ち去った店主が、去り際にすっと自分の衣服に残していった紙切れが男から笑顔を奪う。

「メイコ、父さん腹いたくなってきたから便所いって来るな」
「食事中に汚いなー」

マナーが悪いだとか何とか責める娘に見送られながら男は席を立ち、食堂を出た宿の一角で小さく折りたたまれた紙を開いた。
黙って文面に目を走らせた後、男は小さく溜息をついた。

「……ババ様」

食堂からは賑やかな笑い声に混じって、娘の声も聞こえてくる。
そっと壁にもたれてしばらくの間、その声に耳を澄ませた。
大事な、大事な娘の笑い声に……。
一度ギュッと目を瞑った後、男は食堂に向かって歩き出した。
その瞳に、ある決意を宿らせて……。

 

 

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